覚えてる。忘れない。

周囲の冷たい視線
自らにかかる重圧
時には僕らに当たり散らして
どうしようもなく辛くなってた

暴力への抵抗
貧困からの脱出
抱える荷物の重さを
自分自身が分かっていた

抱きしめて支えてくれたこと
覚えてるよ
助けて励ましてくれたこと
覚えてるよ

ありがとう、お母はん。

家へと続く
長く真っ直ぐな道を
僕の手を握って歩いて帰る

夕焼けに歌を響かせて
駄菓子屋の店先で花を咲かせる
そんな僕を見つめる優しい視線を
その細めた目に溜まった涙を
僕は忘れることはない

寂しがると抱き上げてくれた
頬擦りして褒めてくれた
冷たい手を包んでくれた
生きてゆく辛さも教えてくれた

ありがとう、おばあちゃん。

弟と妹と駆けっこした山道
友だちと交わす挨拶
雨垂れに濡れる店先
暖かい夕げの匂い

全ては今、懐かしい。

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