「ねえ、僕たちは『生まれる』ことができないの?」
「ああ。君たちはこのティッシュに包まれて…何もできずに壊れていく」
「死ぬんじゃないんだね」──「うん。君たちはれっきとした生命じゃないから」
「なぜそう言い切れるの?」
「君たちは完全じゃない。君たちは女性のおなかの中で完全な卵となって、命と呼ばれるんだ」
「……」
「そうなるまでは完全じゃない。半分なんだ」
「半分」<「そう、半分。君たちは単なるDNAの運び屋なんだ」
「その為に生きてきたんだ……」──「いや、『存在してきた』のさ」
「一つ、質問させてくれるかな」>「…いいよ」<「ありがとう──」
「MONOとMONO、単なる存在同士が二つくっついてできたお前オマエは、一体何者? ……ねぇ、教えてよ!」
白いティッシュの上で奮える、小さな物体の集合(カタマリ)。
男はそれをそのまま包み込んでくしゃみ一つして、それを包み込んで屑入れに捨てた。
(了)